建設現場や製造現場では,ロール機,ミキサー,プレス機,コンテナ,スクリュー等が使用されており,こうした機械や器具に手や足を挟まれたり・巻き込まれる事故も多く発生しています。
挟まれ事故・巻き込まれ事故の場合,他の事故類型と同様,安全配慮義務違反を理由として,直接の雇用者や元請け業者に対する損害賠償責任の追及が行われます。
この事故類型では,以下のようなポイントに従って,使用者側の責任の有無が判断されることになります。
- 機械や器具に不具合が生じていることが報告されていなかったのか
- 機械や器具の点検を怠っていなかったか
- 機械や器具の防護措置や安全措置を講じていたのか
- 機械や器具の安全な使用法についての注意や教育を徹底していたか
挟まれ・巻き込まれ事故の場合,機械・器具によって非常に強い力がかかるため,手指や足が切断されるケースも少なくなく,逸失利益を含めた損害賠償額の認定について争われることが多いです。
ここで,労災問題における使用者側への損害賠償請求の場合,どういう損害項目が補填されるのかについてみていきましょう。
- 治療費(入金雑費,付添看護料,通院交通費等も含む)
- 休業損害(仕事を休業したため貰えなかった給与分)
労災保険の適用では,60%(特別支給金を含めると80%)しか支給されないので,それを超える部分について請求できます。 - 慰謝料(入院や通院,後遺症が残ったことに対する精神的苦痛への補填)
労災保険の適用では,入院や通院・後遺症が残ったことに対する慰謝料の支給はなく,使用者に対する損害賠償請求にて補填するほかありません。なお,慰謝料の額算定は,交通事故訴訟でも用いられる以下のような算定表(平成30年度の後遺症慰謝料基準)が一つの目安になるものと考えられます。
第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級 2800万円 2370万円 1990万円 1670万円 1400万円 1180万円 1000万円 第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級 830万円 690万円 550万円 420万円 290万円 180万円 110万円 - 逸失利益(労災被害を受けていなければ得られたであろう将来の収入)
慰謝料同様,労災保険による給付はなく,使用者に対する損害賠償請求にて補填するほかありません。
後遺障害逸失利益の計算は,【収入金額(年収)×労働能力喪失率×稼働年数(67歳までの期間)に対応するライプニッツ係数】という形で行われます。
労働能力喪失率は,以下の労働省労働基準局長通牒(別表1)を参考に,障害等級に応じた労働能力喪失率が適用されるのが原則です。
(別表1)等級 第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級 第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級 労働
能力
喪失率100/100 100/100 100/100 92/100 79/100 67/100 56/100 45/100 35/100 27/100 20/100 14/100 9/100 5/100
なお,障害等級についても,労災認定や交通事故訴訟で用いられると同じ基準が用いられるのが一般的です。
これまでの記載からお分かりになるとおり,挟まれ事故・巻き込まれ事故の場合,後遺障害等級の認定が特に重要になってきます(無論,他の事故類型でも重要です)。通常,使用者側への損害賠償請求は,労災保険の申請後に行われますので,労災認定の際の資料が流用されます。そのため,使用者側への適切な損害賠償請求額を獲得するには,労災被害に遭われた直後の初動対応をしっかりとしていく必要があります。また,他の事故類型同様,使用者側から過失相殺の反論がなされるのが一般的ですので,適切なディフェンスをしなければ賠償額が大きく下がることにもなりかねません。そのため,挟まれ事故・巻き込まれ事故に遭われた場合,弁護士に依頼して,適切な賠償額を獲得していくことがベストです。
弁護士法人グレイスでは,労災保険申請の段階から使用者側への損害賠償請求まで一括してサポートをさせていただくことが可能です。また,年間150件以上の交通事故事件やその他の傷害事故を解決するに至っており,医学的知見が豊富な弁護士や事務スタッフが揃っておりますので,より高度な後遺障害認定を獲得することが期待できます。
鹿児島県やその近隣の県にお住まいで労災被害に遭われた方,一人で悩まず,是非とも弁護士法人グレイスにご相談下さい。我々と一緒に,最善の解決策を模索しましょう。