墜落・転落事故は,建設や製造の現場での足場や屋根等の高所での作業員に多く,重度の後遺障害が残ったり,死亡事故になることも少なくありません。
建設現場で最もよく発生するという特徴がありますので,直接の雇用者だけでなく,元請け業者への損害賠償請求も追及していくことになります。なお,元請け業者へ責任追及については,実質的な使用従属の関係があるかどうかによって判断されます(神戸地裁尼崎支部S60.2.8参照)。例えば,元請けの社員である現場所長や現場監督が常時現場に居て,そうした人達の指示に従って下請業者が施行を行なっているような場合は,元請け業者にも安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求ができる可能性があります。
墜落・転落事故が起きた場合,使用者側に責任追及ができるかどうかは,一般的に以下のポイントに従って判断していくことになります。
- 落下防止のための柵や安全帯といった物理的な対策を講じていたか
- 安全対策のための指導や安全な作業手順の指示をしていたか
- 健康管理や作業工程時間の管理面等から,労働者の健康状態に配慮していたか
例えば,東京地裁S57.3.29は,“ストレート葺鉄骨造のガレージ解体中,誤って鉄骨から足を踏み外し,ストレート屋根を踏み抜いた”という墜落事故について,「本件解体作業にあたり,被告(使用者)から原告(労働者)に対し,本件ストレートは他の現場で使用する予定があり,壊さずに外すよう指示されていたため,原告らは,鉄骨の上に乗ってストレート()を一枚ずつ取り外す作業をしていたことが認められ…右認定事実からみると,本件事故の主たる原因は,本件現場に歩み板を設け,防網を張るなどの踏み抜きによる転落防止措置が全く講じられていなかったことによるものと推認される」と判示しました。つまり,このケースでは,使用者側が『ストレート葺を他の現場で使うから壊さず外すように』との指示をしていたため,作業員は,壊れやすい葺を踏みながら作業をすることができず,とても足場が不安定な状態で作業をしていたといえます。そのため,使用者としては,作業員が墜落しないように歩み板を設置したり,墜落しても大怪我にならないように防網を張るといった物理的な安全策を講じるべきであったというわけです。
墜落・転落事故では,作業員にも不注意な点があったとして,過失相殺(詳細は…「安全配慮義務違反について」に飛ぶ)の反論がなされるのが一般的です。
例えば,命綱や安全帯を付けずに作業をしていた等,明らかに使用者の指示に反していた場合は,50%以上の割合で過失相殺による調整が行われることが多いです(福岡高裁S51.7.14や札幌高裁S50.3.27を参照,)。また,明白な指示違反がない場合でも,事故について作業員に落ち度が認められるのであれば,10%―40%の範囲で過失相殺による調整が行われることになります。そのため,墜落・転落事故の場合,自己に有利な事情をいかに適切に主張していけるかによって,賠償額が大きく変わってくることになります。
上述のとおり,墜落・転落事故の場合,個々の現場の状況を踏まえた適切な主張をしなければ,使用者側の責任追及をすることは困難です。また,使用者側から過失相殺の反論がなされるのが一般的ですので,適切なディフェンスをしなければ賠償額が大きく下がることにもなりかねません。そのため,墜落・転落事故に遭われた場合,弁護士に依頼して,適切な賠償額を獲得していくことがベストです。
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